
アメリカ大統領に就任したトランプ氏が、続々と大統領令を出している。「男性と女性の2つだけが、政府の公式方針となる」と打ち出したトランプ氏は、バイデン政権で性的少数者の多様性を推進してきた政策を、真っ向から否定した。実はアメリカ国内では、昨年末からボーイングやウォルマート、マクドナルドといった大企業でも、多様性を見直す動きが相次いでいる。
また、不法移民の流入を防ぐべく、トランプ氏は「南部国境に国家非常事態を宣言する、我が国への破滅的な侵略を撃退する」として、メキシコとの国境を事実上封鎖する大統領令に署名。1500人の兵士を追加で派遣し、取り締まりを強化するという。メキシコ湾を“アメリカ湾”に改名するとも宣言した。
こうしたトランプ氏の考えに、大聖堂の司教は「性的マイノリティーの人たちのなかには命の危険におびえている人たちもいる。移民の大多数は犯罪者ではない。今おびえている人々に慈悲の心を持ってください」と説教したが、トランプ氏は「面白くはなかった。いい説教ではなかった」とコメントしている。
テレビ朝日外報デスクの中丸徹氏は、「トランプ政権自体が、今まででは非常識なことをやってくれると期待を集めてきた」と指摘する。「性的少数者の理解が進んで、権利を獲得してきたが、一部では納得いかない。例えば、男性として生まれて、女性に転向した人が、スポーツの大会で優勝する。『DNA的に男性』だよねという議論があったりして、納得いかない人たちからするとやりすぎだ、戻したいとしている。宗教保守の背景もあったりして、簡単に言えばLGBTを認めないということ。これは今後、大変なことが予想される」と懸念を示した。
一方で、マイノリティーの立場からすれば、「ショック」との見立てを示す。「トランプ氏の再選で、急に言い出したわけではなく、議論した上でアメリカ国民がこっちを選んでいる」として、「アメリカがそういう国になってきている」と認識しているという。
バイデン政権下では、パスポートの性別に「男性」「女性」と「X」(男性でも女性でもない)の欄があったものの、今後発行されるものについてはXの欄がなくなることが決まった。「暮らしの中で対立が起こり、迫害が起きるのではないか」と、中丸氏は憂慮した。
人種差別をなくすため、これまでアメリカでは、“積極的格差是正措置”として、マイノリティーを優遇する政策を行ってきた。しかし2023年、米連邦最高裁がハーバード大学の有色人種優遇措置を「法の下の平等」に違反すると判断した。「(マイノリティーを)優遇しすぎとなった背景には、アメリカの人口にある。50年くらい前は白人が9割を占める国だったが、2020年には6割を切った。2060年には4割程度。これからは白人こそマイノリティーになる。焦りが感じられるようになった」。
不法移民についても、トランプ氏は批判を続けている。「人口3億3000万人で、不法移民は1000万人いる。許可なく入った人だけで、人口の数パーセントを占める世の中で、そういう人たちも働いて支えられている社会。ただ、トランプ氏からみるとそういう人たちは“犯罪者”で、アメリカ人の仕事を奪っていく。失業すると、不法移民が来るから仕事がなくなっているんだという話になる」と説明する。
そして今回、国家非常事態宣言を出した。「最初は物理的に壁を作ったが、何兆円もかかる。アメリカの国境は、ものすごく長い。トランプ氏は学んで、アメリカの税金ではなく、メキシコとカナダの政府にやらせて、『そうしないと、関税を25%かける』と、関税を切り札にした」という。
(『ABEMA的ニュースショー』より)

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